本日は昼寝日和

 版元の同期会で、大学の学部も学年も同じ(学科は違う)という女性と会った。といっても学部で一学年千人いるわけだし、マスコミ志望のやたら多い大学だったので、まあよくある話だ。一般教養の大教室で一緒になるくらいはあったかもしれないが、語学や専門では接点がなかったと思う。お美しい方だから話したならゼッタイ覚えているはずだ!

 なので「はじめまして」とあいさつしたら、くすくす笑って「でもよくキャンパスで見かけましたよ」というではないか。そうか、俺はやっぱり女性の注目を集めるほどカッコよかったのか、と鼻の下伸ばしてデレデレしていたら「中庭のベンチで昼寝してましたよね、でかい人がよく寝てるので覚えてました。」

 決まり悪いやら恥ずかしいやらで真っ赤になってしまった。天網恢々疏にして漏らさず、悪いことは出来ないものである。

 大学のベンチにもいろんな種類があって、一人がけ用のベンチとか石で出来た延べ棒型(断面「−」型)のベンチは昼寝に適さない。他に断面「L」型のベンチと「し」型のベンチがあるのだが、寝心地がいいのは断然丸みのある「し」型である。そしてこの「し」型が、文学部中庭の人通りの多いところにあったんですよ。当時は(当時から?)人目なんて気にしなかったし、冬場に至っては寒いからって新聞紙を上にかけていたんだから、さぞかし目立っていたことtだろう……お袋が見たら泣いてたな。

 眠いのに授業に出たところで頭に入らないし教室で居眠りするのも悪いから、ともっともな理屈をつけて、学生時代は年がら年中昼寝していた。高校時代は長距離通学でラッシュを避けるため朝早かったので、1限の1時間近く前に着いて誰もいない中庭でよく昼寝(朝寝?)をよくしていた。
 営業マンになってからも、昼食後はどこかで一昼寝しないと何をセールスしようか頭が回らない。だから営業先の昼寝スポットは大体頭に入っている。神保町なら大手堀の緑地、渋谷なら東急デパートの屋上、横浜なら日本橋へ迂回して京急線で一眠りだ。会社に戻ってからもコンピューター室の回転椅子をズラリ並べて一休みしないと日報を書く気も起こらない。

 なんて話をしたら、「体が悪いんじゃない?病院行った方がいいよ」と心配されてしまった。でもいいもんですよ、昼寝は。一生で何日生きられるかは寿命で決まっている訳だけど、昼寝してすっきりするとまた新しい一日が始まったみたいで。

 都会の空なんてなかなか見る機会がないので、ベンチに転がって眺める青空が新鮮だったり。秋に銀杏の下で長いこと寝てたら、体に葉っぱが積もって少し暖かかったり。なんてことを、皇居東御苑の木陰でウトウトしながら思った日曜でした。