2008-01-01から1年間の記事一覧

たかが香港 その3

香港へ旅した人は当然のようにマカオへ足を伸ばすらしい。ポルトガルの旧植民地として残された古きヨーロッパ風の街並みは女性を惹きつけるのだろうし、ギャンブル好きな男なら東洋唯一とされる豪華なカジノが魅力だろう。まして香港のように史跡に乏しいと…

たかが香港 その2

香港の街中をあてもなく彷徨っていると、露店の多さに驚かされる。有名どころでは雑貨を扱った廟街や女人街のナイトマーケットにはじまり、洋服や小物を扱った花園街、古いガラクタを扱ったキャット・ストリート、生鮮食料品を扱った青空市場、クズやボロを…

たかが香港 その1

香港のまんなかに位置し、ビルと山と海に囲まれて着陸の難しいことで有名だった旧啓徳空港は、香港移管直後の98年に閉鎖され、空の玄関は郊外ランタオ島に建設された香港国際空港に移った。そんな新空港に着陸したのが、木曜夜10時半のことである。 空港…

出版社の将来は?

今回陳列の一体化が行われたのはコミック売り場だけだが、隣の文庫売り場も新刊と中古本のコーナーが隣り合っているので、こちらも一体化は時間の問題だろう。 そしてこの取り組みが成功すれば、新刊だけの商売で利幅の小ささに苦しむ他の書店チェーンも、新…

WonderGoo訪問記

千葉ニュータウンは郊外の中の郊外、アメリカの田舎のような場所で、高速道路のような国道464号線に沿ってさまざまな業種の大型店舗が立ち並ぶ。長く都心に住み、バリバリのペーパードライバーと化した僕は、父の車を拝借し死ぬ思いでWonderGooにた…

新刊と中古本の併売について

出版流通の世界では、新刊(昨日今日発売になった最新刊のことではなく、定価で売られているすべての本)と中古本は、冷戦期の北緯38度線並みの厚い壁で分けられている。従って紀伊國屋書店で中古本を扱うことは原則としてないし 、ブックオフで新刊を扱う…

TOKYO BLACKOUT

発売前に多くの書店員にゲラが配られ、すでに評判となっていた。いつもは堅実(ちょっと地味?)な印象のある東京創元社でも、この作品のプロモーションには積極的だ。まさに入魂の一冊なのだろう。TOKYO BLACKOUT (Tokyo Sogensha mystery frontie)作者: 福…

トウキョウソナタ

恵比寿ガーデンシネマ、朝9時45分。 朝一番の映画館は空気が違う。休みの昼の祝祭的な雰囲気も、夜の華麗なムードもなく、上映を待つ人々は手元の本や新聞に目を通し、求道的である。真の映画好きが集まっているのだろう。眠りから覚めたスクリーンも心な…

いざ宇都宮へ!レオナール・フジタ展

7月に札幌へ出張したとき、現地の新聞で藤田嗣治の展覧会が始まったことを知ったのだけど、仕事を早めに切り上げることが出来ず、後ろ髪を引かれる思いで帰ってきた。人見知りの自分が出来る営業なんて限られているのだから、適当に諦めればいいのに。札幌…

おくりびと

本木雅弘演じる主人公は、、ひょんなことから故郷・山形の納棺屋に勤めることになる。旧友から後ろ指をさされ、妻は家を出て行き、何度も仕事を辞めようとするが、納棺屋の社長(山崎努)のもとで数々の死に接するうち、仕事の意味を見いだすようになる… 何…

ヨーロッパ胃弱日記 その4

だから、旅行帰りの人間に「何がよかった」と聞かれるのは正直困るのだ。旅をすること、それは会社にしても家庭にしても居るべき場所から逃げ出すという行為自体が喜びであって、旅先で何を見たかなんて二の次だからだ。そこで「どこに感動したか」なんて槍…

ヨーロッパ胃弱日記 その3

旅人は天気に悩まされる。 それには二つの意味があって、一つは悪天候だと行動範囲が大幅に狭くなってしまうこと。雨が降っているとブラブラ町歩きというのは楽しみにくい。もう一つはその土地の天気を知らないこと。たとえば日本なら真夏の日中、猛烈に暑い…

ヨーロッパ胃弱日記 その2

まったく、旅はままならないものだ。 僕はかなり用心深い性格だと思う。石橋を叩きすぎて落としてしまうタイプだ。だからガイドブックもしっかり読み込むし、予約できることは日本で済ませてしまう。 ところが、どんな完璧に準備を済ませたつもりでも、街角…

ヨーロッパ胃弱日記 その1

日本へ帰ってきて、十日ぶりに会社に顔を出したら、あえなく風邪をひいてしまった。 仕事の過労で倒れたというならともかく、遊び帰りの人間にまわりは厳しい。「どこで悪い遊びをしてきたんだよ」とニヤニヤしているのはマシな方で、えらい人たちの「どんだ…

父のトランク

実家で押し入れから自分のスーツケースを引っ張り出していると、奥に黒いトランクがあることに気づいた。取り出すと、50cm×30cm×20cmで意外に小さく「AirNita」と刻印されている。お袋に尋ねると、親父がヨーロッパへ行ったときに使った…

僕はなぜ洗濯機を買わないのか

部屋に洗濯機がないという話をすると、たいてい哀れみの目を向けられ、次のような会話が待っている。 「じゃあ、洗濯物はどうしてるんですか?」 「近くにコインランドリーがあるから」 「一回に数百円もかかるなら、洗機を買った方が安いじゃないですか」 …

感傷スケッチ

ティッシュペーパーがなくなったので、近くの生協まで買いに行く。 5箱で400円、別に高い買い物ではないが、5箱使うまでどれくらいの月日が必要なのだろう。 1箱160組として、1日に1組使うと、5箱(800組)使うには2年。2年後に、今と同じ…

街かどの教授

親の実家に泊まって、浜でも見に行こうかと思い立つ。「自転車借りますよー」と伯母さんに声をかけてガレージに向かうと、3台あるはずが1台はパンク、まともな1台は誰かが使っていて、錆び付いた1台のサドルを何とか調節し少しゆるんだタイヤで走り出す…

鋼鉄の騎士

裏切り、というのは何度されても嫌なモノである。 はじめは相手への怒りや憎しみが吹き出す。それだけですめば簡単なのだが、まだ相手を信じようとする自分に気づく。信じたい、でも現実には信じられない。その狭間でもがくうち、自分の人を見る目のなさを嘆…

ソウルの補習問題 第三問

ソウル都心から少し南に行った上道という住宅街に「COMIC COZZLE」というコミック専門店ができ、そこに日本の出版関係者なら名を知らぬ人のない元大阪J書店のNさんが店長として赴任したと業界紙で知り、尋ねてみた。アポも取らず突然訪れた、し…

ソウルの補習問題 第二問

その国が進んでいるかどうかをはかる目安は、道を安全に歩けるかだと思う。 上海は最悪だった。歩道を自転車やバイクが爆走するし、交差点では盛大な信号無視が繰り広げられる。台北はそれよりマシだが、イナゴの大群のようなバイク連に気をつけないとひき殺…

ソウルの補習問題 第一問

ソウルの繁華街・明洞のすぐそばに、南山という小高い丘がある。そこに立つ「Nソウル・タワー」からの夜景がきれいと評判だ。バカと煙は何とやらで、高いところの大好きな僕はさっそく行ってみた。 このタワーは3年前にリニューアルされたそうで、現代的な…

ソウルの予習問題

きっかけは、昨秋手に取った一冊の本だった。都市伝説 ソウル大改造作者: 李明博,屋良朝建出版社/メーカー: マネジメント社発売日: 2007/08メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (2件) を見る 元ソウル市長で韓国大統領候補(当時)だった李…

仕事術が花盛り

みんな、働き過ぎだ! 同世代と話していると、8時9時は当たり前。終電まで粘ることもあれば、真夜中や土日まで平気で働いている友達も多い。9時5時で帰る人とか、ニートや引きこもりなんて、どの世界の話だろうと思う。これでは遠慮して、デートに誘うど…

『ゴールデンスランバー』『自死という生き方』

ゴールデンスランバー作者: 伊坂幸太郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/11/29メディア: ハードカバー購入: 12人 クリック: 551回この商品を含むブログ (766件) を見る 参りました、という心境である。本屋さんで大人気の伊坂幸太郎は、『重力ピエロ』は…

『週末海外』『私の男』『書店営業』

仕事が忙しいあなたのための 週末海外! サンデートラベラーの旅行&仕事術作者: 吉田友和出版社/メーカー: 情報センター出版局発売日: 2007/07/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 24回この商品を含むブログ (19件) を見る 最近、旅に出ていない。会社に…

『満員電車がなくなる日』『ヤバい経済学』『死と身体』『僕が猪瀬事

満員電車がなくなる日―鉄道イノベーションが日本を救う (角川SSC新書)作者: 阿部等出版社/メーカー: 角川SSコミュニケーションズ発売日: 2008/02/01メディア: 新書購入: 7人 クリック: 125回この商品を含むブログ (38件) を見る 僕の実家は千葉県八千代市、…

『八日目の蝉』『その数学が戦略を決める』

[rakuten:book:12011745:detail] 女が愛する妻帯者の赤ん坊を盗む場面から物語が始まる。そして女は逃げる。最初のうち、読んでいて気持ち悪くなった。それは女の逃げる理由がわからないからだし、女が赤ん坊をあまりに盲目的に愛しこんでいるからでもあるし…

遠くのアメリカより近くの中国?

僕は日本に生まれ、日本で暮らし、日本語を話す、したがって日本がいい国であってほしいと願うナショナリストだが、その割には石原慎太郎やら小林よしのりといった愛国者のみなさんとは意見が合わない。 書店に足を運べば、人文書のコーナーには「日本はこん…

冷たい保険屋

赤坂見附の交差点に面したAIU保険の代理店に、こんな張り紙がしてあった。「スタッフがこの辺の地理に不案内なので、道はすぐ近くの交番で聞いてください」 見たときは「なるほど、立地のいいところにあるし、相当多くの人に道を聞かれるんだろうな」と同…