感傷スケッチ

 ティッシュペーパーがなくなったので、近くの生協まで買いに行く。
 5箱で400円、別に高い買い物ではないが、5箱使うまでどれくらいの月日が必要なのだろう。
 1箱160組として、1日に1組使うと、5箱(800組)使うには2年。2年後に、今と同じ中野のボロアパートにいるのだろうか。
 なんとなく、買うのをためらってしまう。


 南北線から丸ノ内線への乗り換えで、四ッ谷駅のホームの端へ行くと、屋根が切れていて東京のど真ん中とは思えないほど見事な夜空が広がっている。
 思わず深呼吸した。


 お茶の水のビルのロビーで、声をかけられた。目が悪いのといつもボーッとしているので、いつも向こうから声をかけられるのだが、顔を上げてみれば最近同業に戻ってきた一つ下の女の子が微笑んでいた。
 販売の仕事が好きで転職したのだという。ふだんから素敵な笑顔で接してくれるのだが、今日はいつも以上に輝いてみえた。
 ここ一ヶ月ほど自分の仕事に疑問符を打ち続けている自分は、うつむきながら打ち合わせに向かう。


 実家に帰ると、親父は僕が起きる前に仕事へ行って、僕がビールで酔っぱらっている頃帰ってくる。数えてみれば今年で62歳だ。週一日の休みで、律儀に通い続ける親父が信じられない。不肖の息子で誠に申し訳なく思う。
 親父は何を考えて生きているんだろう。


 ビールを買いにコンビニめざして歩いていると、信号待ちをしている車に挟まれて、千葉ロッテのユニフォームを着た親子連れが、バイクにまたがっていた。
 今は午前11時前、デーゲームだから試合開始は午後1時だろうか。
 いつもより強めにロッテの勝利を祈りながら、ビール片手にCSのテレビ中継を眺めていたのだが、1点差で負けてしまった。


 後輩が結婚するのだという。この種の話を聞くのは今年何件目だろうか。
 これまで独身者が圧倒的多数を占める与党だったのに、いつの間にやら形勢逆転。だんだん議場の隅に追いやられてきた。
 教えてくれた元同級生と、30分近く電話で話す。自分の話をする機会はくるのだろうか。それとも障害となる欠陥があるのだろうか。


 近ごろ、どうにも考えがまとまらないので、スケッチだけ綴ってみたけど、ひどく感傷的だ。
 いい風が吹いてこない。