冷たい保険屋

 赤坂見附の交差点に面したAIU保険の代理店に、こんな張り紙がしてあった。

「スタッフがこの辺の地理に不案内なので、道はすぐ近くの交番で聞いてください」

 見たときは「なるほど、立地のいいところにあるし、相当多くの人に道を聞かれるんだろうな」と同情したが、どうも引っかかりを覚えた。

 近くに交番があるのだし、道を教えるのは交番の仕事なのだから、そちらに任せる、という考えは、きわめて合理的なのだろう(道案内をするたびに仕事が中断されてしまうだろうし)。だがこちらから見ると、困ったときは助け合いというのは社会のマナーだし、いい立地に店を構えている以上、それなりの社会的コストを払うのは当然じゃないかと思う。

 もっとはっきり言えば、「道なら交番で聞いて」という拒絶は冷たすぎる。少なくとも僕は、どんなにテレビでCMを流そうと新聞でステキな広告を打とうと、そんな保険会社に自分の一生を任せないね。その辺の道案内もできないようなところに、人生の道案内をされてたまるものか!

 薄情な貼り紙の代わりに、一枚の地図を貼るだけでもずいぶん違うだろう。せっかくお店の中に入ってくれたんだから、保険の宣伝を刷り込んだ地図を渡すといったやり方だってあるだろう。人は助けてもらったらその分恩返しをしたくなるものだから、ちょっと保険に興味のある人なら契約につながるかもしれない。

 今の世の中、コミュニケーション不足が深刻ですよ。