新刊と中古本の併売について

 出版流通の世界では、新刊(昨日今日発売になった最新刊のことではなく、定価で売られているすべての本)と中古本は、冷戦期の北緯38度線並みの厚い壁で分けられている。従って紀伊國屋書店で中古本を扱うことは原則としてないし 、ブックオフで新刊を扱うことも原則としてない。アマゾン?ややこしくなるのでその話は別の機会にお願いします。


 なぜかというと、新刊と中古本の併売は出版社に大きな影響があるためだ。安い中古本と定価の新刊が並んでいたら、お客さんは中古本を選ぶ可能性が高い。中古本が売れても出版社には1円の利益もない。
 また、書店は中古本を新刊として返品することで金を生み出すことができる。たとえば定価1000円の本を読み終えたお客さんから100円で買い取り、それを新刊として返品すると800円(本の小売りへの卸値は一般的に80%前後)を手にすることができる。それだけで800円−100円=700円の利益。もちろん違法で、見つかれば二度と出版の世界で商売できないだろうが、チェック手段がないので、資金繰りに追い詰められた書店が手を出さないとも限らない。


 そのため出版社は新刊と中古本の併売に大反対で、中でも新刊と中古本を同じ棚で販売すること(陳列場所の一体化)はタブーとされてきた。果敢にも新刊と中古本をともに扱う書店チェーン(広島のフタバ図書や全国チェーンのゲオ等)ですら、圧力によって新刊と中古本の売り場をはっきり分けさせられた。


 ところが、タブーこそ禁断の果実。10月21日の日経新聞が、茨城に本拠を置く郊外に複合型の店舗を構える(本・CDDVD・ゲーム・化粧品などを扱う)WonderGooが、まず5店舗で新刊と中古本の陳列場所の一体化を試みると報じた(2009年中には20店に拡大予定)。一般にはどうでもいいニュースだろうが、出版業界的には驚愕である。その5店舗のひとつ・千葉ニュータウン店が僕の実家から近いので、さっそく店を訪ねることにした。