TOKYO BLACKOUT

 発売前に多くの書店員にゲラが配られ、すでに評判となっていた。いつもは堅実(ちょっと地味?)な印象のある東京創元社でも、この作品のプロモーションには積極的だ。まさに入魂の一冊なのだろう。

TOKYO BLACKOUT (Tokyo Sogensha mystery frontie)

TOKYO BLACKOUT (Tokyo Sogensha mystery frontie)

 東京を深く憎む犯人が企てた電力テロにより、東京は未曾有の大停電=BLACKOUTに見舞われる。その最終目的は、東京に住む誰もが手に入れることのできない、あるものだった・・・。
 と書くとただのミステリーを想像されるかと思うが、この本の読みどころはむしろ、大都市に安定した電気を届けるべく奮闘する電力マンたちにあると思う。次々発生する事件で送電を止めざるを得ない彼らの苦悩、その結果引き起こされる数々の混乱、それらを乗り越えたラストシーンは、彼らこそ東京という大都市を支えているのだなぁと頭を垂れずにいられないだろう。
 作者の膨大な取材力と壮大な構成力にただただ脱帽。東京という街を愛する全ての人にお勧めする一冊です。評価★★★★☆