仕事術が花盛り

 みんな、働き過ぎだ!
 同世代と話していると、8時9時は当たり前。終電まで粘ることもあれば、真夜中や土日まで平気で働いている友達も多い。9時5時で帰る人とか、ニートや引きこもりなんて、どの世界の話だろうと思う。これでは遠慮して、デートに誘うどころかメールも送れやしない。
 物心ついたころにバブルが崩壊し、長く冷たい平成不況の風に吹かれて育った僕らの世代(ニュースでいちばん耳にした言葉は「リストラ」ではないだろうか)は、働くことに対してきわめてマジメである。もっと適当に、手を抜けばいいのに、なんて思うが、自分も会社もそれを許さない。誰もかれも疲れ切っている。


 そんなわけでビジネス書コーナーには、仕事術の本が花盛りです。
 ドーンと多面積みされた仕事術の本を見ていると、若いホワイトカラーの悲鳴が聞こえてくるようだ。「楽させてくれ!」「もう残業したくない!」「ゆっくり寝たい!」
 残業や休日出勤が多いのは、仕事が多いからである。ホワイトカラーの仕事とは、情報を処理することだから、そもそも扱う情報が多すぎるのである。いまよく売れているビジネス書も、あふれる情報とどう向き合ったらいいのかが書かれている。


 まずは「情報こそが現代の通貨である」と言い切るこの本から。

 現代とは情報を持っていない人から情報を持っている人へお金が移動する時代だとして、人よりお金を稼ぐためには質の高い情報を手に入れる必要があると説く。そのためにどうすればいいのかというと、取り入れた情報を咀嚼し、自分自身をメディアにして発信する。大量のインプットとアウトプットを繰り返すうちに、情報の質が上がっていくのだという。理屈としてはわかるけど、この方法を誰もが出来るかというと疑問だな。


 続いて、今ある情報で立ち向かおうとするのがこの本。

佐藤可士和の超整理術

佐藤可士和の超整理術

 仕事とは自分の作品を作ることではなく、相手(顧客)の問題を解決することだという。そのためには、今目の前にある物事を整理することが必要で、1状況把握2視点導入3課題設定という3ステップを踏めばいい。方法としてはオーソドックスなものだが、「極生」の開発や「国立新美術館」のデザインなど具体例を挙げられると、簡単なことほど難しいんだなと思う。


 一方、「情報への過度の依存が思考停止を招く」と警告するのがこの本。

地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」

地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」

 変化の激しい現代において必要なのは、過去の知識や記憶ではなく、未知の領域で問題解決をしていくための「考える力」である。まず結論を考え仮説を立てること、全体から俯瞰すること、難しい物事は単純にしてみること、この3点を心がければ情報漬けから脱却できるという。25歳を過ぎると、身についた考え方を直すのは大変で、こういうことこそ、大学で教えてほしかったんだけどな。
 「流れ星に願い事をする人は夢が叶う」というのは説得力があった。気になる人は読んでみてください。


 この3冊を比べると、情報の扱い方に関して『グーグル化』と『地頭力』では主張が正反対で面白い(『超整理術』はその中間と言ったところか)。僕自身は受験勉強で鍛えられた情報主義者なので、『地頭力』の主張が耳に痛かった。
 どちらもランキング上位に入っているところを見ると、極右と極左が意外と簡単に転向してしまうように、『グーグル化』も『地頭力』も読んだという人は多い気がするな。


 「情報の扱い方云々の問題じゃない、もっと物理的に仕事を減らしたい」という人向きなのがこちら。

「残業ゼロ」の仕事力

「残業ゼロ」の仕事力

 「残業はホワイトカラーの仕事の効率を確実に落としている」として、社長自ら定時で職場の電気を切り、違反した社員に罰金を科し、反省会まで開いたという。

 社員に残業を強いて長時間働かせれば、その分余計に仕事ができるのはあたりまえ、そんなものは経営手腕でもなんでもありません。

 ここまで言い切れる経営者が何人いるだろう。春闘で社長のテーブルにこの本を置いたら面白そうだ。


 そんなこんなで流行のビジネス書についてまとめてみました。どれも白い表紙に黒ゴシック体の署名なのが興味深い。残業に悩むみなさんのお役に立てばうれしいです。
 でも、今年初めて残業なしで帰ってきたのに、仕事術についてまとめているのだから処置なしである。疲れたのでこれでも読んで寝ようっと…

適当日記

適当日記