関西書店の旅 京都書店迷宮案内


 京阪電車河原町駅を降りて、四条通を西へ行ったところにあるのがジュンク堂京都店。ジュンク堂はどこへ行ってもジュンク堂。原則として平台を置かず、高い棚をズラッと横に並べ、差しと面陳で展開しているのは毎度のことだが、フロアが狭く天井も低くて圧迫感がある。い、息が……。
 ジュンク堂のちょっと先にあるのがブックストア談京都店。店頭では瀬戸内寂聴や石川恭三『医者いらずの本』(集英社文庫)をパネル付きでワゴン展開。『ダヴィンチ・コード』のように新刊を並べるお店はよくあるが、売れると思えば既刊でもどーんと仕掛けるのは談さんの得意技。「本を選ぶ」力がないとなかなかできないことです。
 そんな渋いものを展開しているので年配向けのお店かと思ったら、1Fの奥半分にはライトノベル、2Fはコミック、3Fにプラモデルとサブカル・ホビー系書籍を置いているところからすると若者向けのお店でもあるようだ。客層を絞りにくい場所なのかな?

 新京極通をずっと北に行ったところにあるのが紀伊国屋京都MOVIX店。シネマコンプレックスの建物内にあり、1Fは雑誌・話題書とDVD、地下1Fに書籍からコミックまで一通り揃えてあるのだが、棚の配置がいいかげんで方向性がよくわからない。たとえば河出文庫のスペースが祥伝社・双葉・廣済堂といったオヤジ文庫に囲まれている。これじゃ誰も『インストール』を買えないって。エスカレータ下では日文や実日の雑学本フェアを展開しているのに、すぐ前についたてを立てて「洋画スターサイン展」なんてやってるものだから、雑学本フェアが死んでしまっている。かわいそうに全部返品だよ。
 紀伊国屋さんのプライドが邪魔をして、狭いお店でも一通り揃えようとするから、結局「何でもありそうだけど、どこにあるのかわからない」状態になってしまうのだ。ジャンルを絞って、余分な商品と棚を減らして、ゾーンと人の流れをはっきりさせてください。


 河原町通りは丸善河原町店に続いて、ブックファースト京都店も閉店してしまったが、大きなファッションビルの5〜8Fにジュンク堂京都BAL店が2月オープン。長方形の広いスペースを活かして、ゾーン分けをしっかりやってるし、棚間を1.5〜2メートルもとっているので本が探しやすい。やっぱり広くないとジュンク堂じゃないですよ。
 お店へ行くにはエスカレータかエレベータ(たった1台!)を使うしかないのだが、5Fのエスカレータをあがった一等地で、盆栽フェアだの野菜作りフェアだの格闘技フェアだの、ずいぶんマニアックなことをやっていて大丈夫なんでしょうか。
 店内には例の「品揃えだけが取り柄の愚直な本屋です」という開店ポスターが貼ってあって「京都店がライバルです」ともあるけど、どっちも同じ思想で作られた本屋だから比べようがないって。

 舞台は駅前に移りまして、近鉄デパートの5Fにあるのがワンフロア大型の旭屋京都店。人文・ビジネスなどジャンルごとにゾーン分け・カラーリングして、ゾーンの間に太い通路を通している。その通路に面した縦4面×横8面ほどのエンド台にはそのコーナーの一押し商品が並べてあって、お客さんは太い通路を通ってお店を一周するだけで各ジャンルの売れ筋をチェックできるという訳ですね。ぶらっと本屋さんをまわりたいときにはいいお店です。旭屋さんでは札幌店も同じ構造をしています。
 通路と通路に挟まれたカルチャー(実用書)やホビー(趣味書)のゾーンでは、カーブする什器を使っています。半円型の什器を入れることで、そのゾーンにまとまりを持たせると同時に、フロアにアクセントもつけているわけですね。他でも二段(上から見ると◎状)になった丸い平台もあったり、什器にはかなりこだわりがある模様。歩いていると要所要所で独自フェアをやったりランキングを見せたり、お客さんを飽きさせない作りです。
 文芸や文庫のコーナーでは出版社提供のPOPやパネルをうまく使って盛り上げています。ただ店員手書きの紹介文が『包帯クラブ』と『クローズド・ノート』にしかついてないのはちょっと寂しいところ。あと近鉄百貨店自体が07年2月に閉店してしまうので、そのあとが気になります。

 京都タワーの3Fという微妙な場所にあるのが中型の京都タワーブックセンター。普通の本屋さんなのだが、仏教本だけで棚を3本とってあるのが京都らしいといえば京都らしい。
 バカでかい京都駅ビルの地下1Fにあるのが三省堂京都店。担当さんがすごい本好きのようで、文庫コーナーにはこれでもかとPOPがついている。ただミステリーや女性向けの本に偏っているので、趣味が合わない人はとことんあわないはず。本当にごめんなさい、僕はダメです。改札口から一番近い、つまり万人が使うお店で個性的な品揃えをすることには賛否両論あるところか。
 駅の反対側、八条通の向かい側にあるショッピングビルの5Fにはアヴァンティブックセンター。ワンフロア大型のスペースをきっちりゾーン分けして、太い通路を通しているところは旭屋に似ているが、整然としすぎて遊び心に欠ける気がします。


 ぶらぶら本を眺めるなら回遊性の高い旭屋さん、探したい本があるならBALのジュンクさん、でときどき談さんをのぞく、というのが僕の結論です。談さんみたいなお店があと数軒あると面白いんですが、知ってる方は教えて下さい。