中華弁当ユリシーズ

 今日は会社が休みだったので、丸ノ内線で新宿へ出かけた。
 本店さんをブラブラしたあと寄席まで時間があったので、ここは一つ粋に、伊勢丹の屋上で弁当でも食べようじゃないの、と思った。地下のブルジョア食品売り場をのぞくと、サンドイッチが700円もしていて仰天したのだが、安い中華弁当(550円)を発見、確保した。準備万端、さあいざ屋上へ、と勢いよくエレベータに乗り込むと、「R」のボタンがない。戸惑いながら上を見上げると、張り紙が……

「ただいま屋上は緑化工事のため閉鎖しております」

 ご想像下さい。伊勢丹に買い物に来るような上流階級の奥様方の中で、中華弁当をぶら下げて呆然とする24歳男子(独身)の姿を。

 どれほどの時間がたったのだろう。我に返って、このまま伊勢丹にいても仕方ないことに気づき、店を出た。今後自分が伊勢丹に入ることは二度とないであろう。手元の弁当さえなければ、適当な店に入ってランチを頼めるのに、と10分前の自分の軽率な行動を恨んだが後の祭りである。
 しかし、新宿で弁当を食べるというのは難問ですよ。西口公園は遠すぎるし、三越の屋上は一般客が入れない。御苑という手もあるが、ただ弁当を食べるために入園料を払うのは癪である。ユリシーズのようにベンチを求めてさまよう独り者。手元に弁当があるのに、食べることを許されないとは、世の中はなんと理不尽なのだろう。

 ようやく公園を見つけ、ベンチは埋まっていたので適当な場所に腰をかけ、弁当を開く。いや、こんなにおいしい弁当は久しぶりだ。我飯食いて鳩と戯れたりして、さあ末廣亭に行こうかとしたとき、その公園の名前に気づいた。

新宿公園(新宿区新宿2丁目)
http://www.the-shinjuku.ne.jp/CONTENTS/IN/SPECIAL/2CHOME/TAIKEN/shinjukupark.html

 いや、そういう気配はなかったんですよ。サラリーマンやタクシーの運ちゃんがくつろぐ普通の公園でした。昼間だしね。でも夜一人で弁当を食べられるかはわかりません。