本屋さんは何よりの道しるべ

笑酔亭梅寿謎解噺 1 ハナシがちがう! (集英社文庫)

笑酔亭梅寿謎解噺 1 ハナシがちがう! (集英社文庫)

 盛岡「さわや書店」で薦められた一冊。江戸の落語を題材にした小説に佐藤多佳子の『しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)』がある(来年映画化とか、青春のモヤモヤをすくい取った佳作。必読!)けど、こちらは上方つまり関西の落語がテーマ。むちゃくちゃな奴らがズラズラ出てくるけど、大阪人だったら現実にいそうだというあたりがミソ。鶴光だけじゃなくて、天満繁盛亭上方落語をびっちり聞いてみたくなった。評価★★★☆☆

海賊モア船長の遍歴 (中公文庫)

海賊モア船長の遍歴 (中公文庫)

 所用で成田へ行ったついでに駅前の「信水舎」をのぞいたら、多島斗志之のミニコーナーがあって思わず購入。多島さんは有隣堂さんに薦められた短編集『追憶列車 (角川文庫)』が絶品で、それ以来気になる作家なのだ。
「いや、お客さん、この本面白いのにもう絶版なんですよ」
「そうですよね。多島さんの本は売れるかというと必ずしも…」
「しかし、多島さんを知ってるなんてめずらしい」
「え、いや、あの、○×というボロ出版社の営業マンをやっていまして…名刺は、あれ、非番なので名刺はないんですすみません(以下略)」
 相変わらず何やってるんだという話で恐縮ですが、この本は18世紀のインド洋を舞台に海賊として活躍するモア船長と彼が率いる「アドヴェンチャー・ギャレー」号を描いた冒険小説。多島さんの作品は歴史的背景がうまく咀嚼され、世界史オンチな僕でもぐいぐい引き込まれた。抑えの効いた淡泊な文章で、緻密に作り込まれた作品世界。まさにオトナの読み物だ。昔『十五少年漂流記』にはまった人なら、ゼッタイ興奮するはず。評価★★★★☆