関西書店の旅 大阪ミナミ書店人情物語


 まずは丸善心斎橋店です。復活したそごうデパートの上にあるのですが、エレベーターが混んでいるのでエスカレーターで行くことにします。……いやー、12Fは遠いです。あげくにエスカレーターの前には「書籍売り場は奥です」という看板が。客をどこまで連れ込む気でしょうか。
 各ブロックをガラス壁で仕切り、路地のように通路をとおしています。手前にはレジと文具のブロックと芸術書のブロック、奥には一般書や雑誌のブロックがあります。レジと書籍のブロックが分かれていると、心理的に面倒で買う気がなくなるし、なにより万引きの皆さんが大活躍でしょう。
 デパートの上ということで児童書はコーナーをつくって展開してますが、このお店コミック売り場がない! なにも18禁コミックを置いてくれといってる訳ではないんです。子どもにドラえもんポケモンの本をせがまれたら、親はどう言い訳するんでしょうか。「マンガを読むような下流階級は天下の丸善様に来るな」といわんばかりの選民思想が鼻につきます。ついでに児童書と親向けの教育書がブロックの両極に位置しているのは、末期的だと思うんですが。


 心斎橋の商店街を南に下るとアセンス本店です。上の階には画廊がある、いわゆるアート系のお店ですが、気配りが行き届いている本屋さんです。1Fの文芸書コーナーには村上春樹の著書の隣に、原稿流出事件について載ってる「文藝春秋」がポップをつけて積んであったり、2Fの文庫コーナーでは手作りの著者別プレート(新潮文庫の「あ 芥川龍之介」ってやつです)が文春・集英・角川の文庫にも差してあったり、お客さんのことを考えてお店が作られています。大きさは違いますが、青山ブックセンター本店の居心地良さと近いかも。
 道頓堀にかかる戎橋をわたるとツタヤ戎橋店です。繁華街のど真ん中、例のお化け蟹の向かいに位置していて、しかも1Fが雑誌書籍売り場です。渋谷のツタヤも最強立地ですが、あそこはコミック5F雑誌書籍6Fなので、戎橋の方が上でしょう。入り口付近をオープンテラスのコーヒー店が占拠していて、開けっぴろげな感じ。雨宮処凛の『すごい生き方』をドーンと展開していたり、やることが派手です。ツタヤも大阪に来るとこんなノリになるんですね。

 南海なんば駅の地下にあるのが旭屋書店なんばCITY店。札幌や京都と比べると雑多な感じで、池袋や船橋に近いお店です。
 一方同じ旭屋でも天王寺MiO店は2月にリニューアルしたばかりで、お堅いイメージの旭屋らしからぬパステル調に彩られています。コンセプトは「都会の中の森」。背が高く面陳もできる什器を採用することで、平台を極力減らし、通路幅を確保しています。狭いお店をいやがる女性を意識しているんですね。
 エスカレーターをあがると左右に新刊・フェア台があって正面が集中レジ、右側が専門書、左側が雑誌・文庫・コミック・一般書です。ゾーンがはっきりしているので、本を探すのに迷うことはないでしょう。奥まったところにはガラスで仕切られたアート本コーナーがあります。床が黒塗り、中には椅子も置いてあって異空間。
 とインフラは面白いんですが、品物が今イチ。リニューアルして間もないので仕方ないのでしょうが、日曜の昼間にフェア台を作っていたり、ガイドのエンド台には「地球の歩き方」がだーっと積まれていたり、雑誌什器には「国文学」が多面陳されていたり、アラが目立ちます。あとは店員さんの仕入れと展開次第でしょう。

 天王寺駅を出て歩道橋を渡ったところにあるのが喜久屋書店あべの店。ジュンク堂の兄弟店ということもあって、とにかくでかい。1フロアは1フロアなんですが、3つのビルにまたがっていて、一般書・専門書、児童書、絵本・漫画館に分かれています。本はとにかくいっぱいあるんでしょうが、検索機がないようなので、探す人は気合いを入れて下さい。旭屋が「森」なら喜久屋は「密林」といったところでしょうか。とにかく巨大で、奥には「謡曲集」がズラリ面陳してあったりして、何かいうのも面倒になってきました。


 しかし、ミナミの本屋はアクが強い。書店さんは土地柄を反映するんですね。軟弱な関東人はもうグッタリです。神戸編はまたこんどにして撤収します。いろいろ生意気いってすいませんでした。最後まで読んでいただいた皆さん、お疲れさまでした!