NY点景(4) ストランド古書店

 本屋には人びとの頭の中身がそっくり展開されている。そこに住む人は何に興味を持ち、どんな事を考えているのか。だから旅先で必ず本屋をのぞく。
 ストランド古書店は繁華街・ユニオンスクエアのそばにある。日本で古本屋というと神保町は田村書店のように小さいお店の奥にガンコ親父がいるか、ブックオフのように店は大きくて明るいがラインナップには知性品性の欠片もないか(この対立はよくも悪くも現代日本を反映している)のいずれかだが、このストランド古書店は大きくて店員にも目利きが揃っているとの評判である。なにしろ店のキャッチは"8miles of books"、商品全部並べると13キロになるというのだ。増床リニューアルしたあとはさらに大きくなったらしい。

 石造りで風格ある建物の入り口でカバンを預ける。中は図書館のようで、地下1階から3階までの4フロアで構成。アメリカに来たら手に入れたかったボブ・グリーンのコラム集を探そうと店員に「コラムの棚はどこですか?」と尋ねたが、要領を得ない。もしやと思って地下のジャーナリズムの棚をチェックしたら、あったあった。「ボブ・グリーンのアメリカ」という600ページ近いコラム集が$7.50。近くにピート・ハミルのコラム集もあったのだが、難しそうなので諦める。
 僕は英語がダメなのだが、デザイン書や写真集、児童書のあたりを見ているだけでも飽きない。ビリー・ワイルダー監督の映画コレクションが面陳されていて、中をめくったら「アパートの鍵貸します」のシャーリー・マクレーンの笑顔にやられて購入$8.90。古いニューヨークの写真集も購入$7.95。勢いで近くのバーンズ&ノーブルで500ページにもわたる「ジョーク大辞典」を$14.95で購入。最後は余計という気もしますが。
 これらを5ドルで買ったトートバッグに入れると、肩にブロックを乗せたみたいだ。しまった、これを日本まで持ち帰るのか!と気づいたときには後悔先に立たず。あとさき考えずに本屋でバカ買いしてしまうのは僕の悪癖の一つである。ブランドものを買いあさる女性と心理は一緒で、どうもこれ以上バカになったら終わりだという危機感が、バカ買いに走らせているらしい。皮肉である。
 買ったところでどうせ読まないのにね。