思えば福岡へ来たもんだ 下関

 ホテルの車で門司港駅まで送ってもらい、そのまま電車に乗ってもいいのだが、目の前に関門海峡を渡るフェリーが泊まっているので、下関に立ち寄ることにした。
 船に乗るときは海風を受けるのが好きなので、よっぽど天気が悪くない限りは甲板に立っている(ときどき自殺志願者に間違われる)のだが、このフェリーには外甲板がない。がっかりして船室にはいると、船は動きだし、猛烈な水しぶきを上げながら進んでいった。外甲板に立っていた日にはずぶ濡れであろう。見た目は穏やかにみえるが、海峡だけあって流れは早いようだ。
 桟橋から歩いてすぐのところに、唐戸市場という海産物のマーケットがあるので立ち寄った。2階には食堂もあり、ホテルでバイキングの朝食をとったばかりだというのに、条件反射的に「はまち定食」を頼んでしまう。近ごろ出張や旅行に出ると、土地の名物につい手を出してしまう。食べ物を味わう余裕ができたのか、もともと食い意地が張っていたのかはわからない。醤油が甘くてどろっとしているのに、ちょっと慣れない。

 路線バスで下関駅に出て、下り電車に乗る。関門海峡を今度はトンネルでくぐり、小倉駅に到着。このまま新幹線か鹿児島本線に乗ってしまえば簡単なのだが、そう急ぐ旅ではないし、筑豊ボタ山を一目見てみようと思い、日田彦山線田川後藤寺行きに乗り換えた。
 が、ここ数日の寝不足とディーゼルカーの心地よい揺れに眠り込んでしまい、ボタ山のボの字も見ないまま終点に着いた。その後、後藤寺線新飯塚へ、筑豊本線から篠栗線への直通快速に乗り継いだが、車内が混んでいたこともあって車窓は眺められず、ムダに遠回りしただけで昼前に博多に着いたのだった。