間違いだらけの上海案内 その2

 それでもぶつかってしまったら怒鳴り合いになるのだろうが、日本人が戦いを挑むのは無謀かも知れない。まず声がでかい。そして早口である。交渉では一歩も引かない。
 上海では女が強く、男が弱いという。実際、道ばたでケンカするカップルを二例みたが、女性の方が圧倒的優勢であった。一方で男はどうも頼りなく、豫園へ行こうと乗ったタクシーで乗車拒否されたときも、肩をすくめて出て行けというジェスチャーをするだけなので拍子抜けしてしまった。これが「お前のような近距離の外人客を誰か乗せるものか!」という調子で言われたなら、こっちも応戦して「黄浦江に突っ込んでクソにまみれろ」と日本語で叫んでやるところなんだけど。
 地下鉄の車内では走行音などまった感じないくらい、皆さん大きな声で喋っている。あっちこっちウェイウェイうるせえなぁと思ったら携帯電話だ(「ウェイ」は「もしもし」の意)。それでも慣れてくると何も感じなくなるもので、成田から帰りのスカイライナーが気味悪いくらい静かだったこと(あんなに混んでたのに)。
 車内でも「文明乗車」という掲示がくどいほどあって、上海万博を前に当局も気にはしているらしい。というよりこれだけ勝手気ままな連中が相手なんだから、一党独裁じゃないと国のまとまりがつかないだろうし、いわゆる進歩的・良心的な官僚は胃を痛めているんじゃないかと思わず同情してしまった。