美しき島、麗しきテツの旅 その1

 新幹線の楽しみは、乗るよりも見るところにあると思う。
 わざわざ台湾まで乗りに行って、そんなこと言うのもおかしな話なんだけど。


 台北駅の地下ホームを9時06分に発車したこだま(各駅停車)タイプの左営行きは、十分もしないうち板橋駅に着く。発車すると地上に出て、コンクリートの高架橋を快走する。車両はのぞみ(700系)を改造したものだし、車窓にも水田が広がり、日本の新幹線がそのまま伸びてきたような印象だ。
 国際空港に近い桃園駅、十棟近い高層ビルを駅前に建築中の新竹駅、台湾中部の大都市・台中駅と20分ごと停まる。その間、車内のLED表示で「298km/h」を目撃したが、そんなものかといった感じでもある。
 乗車率は7〜8割ほど、平日だがスーツ姿は少なく、途中駅での乗り降りが多い。日本の新幹線との違いは、駅の停車時間が長いこと、トンネルに入るとき耳の圧迫感がないことくらい。


 上海のリニアモーターカーも、乗っている時は意外と平気だったが、帰り道バスの車窓から500km/h近いスピードで走る車体を目撃したとき、人間はなんと恐ろしい乗り物を造ったのだろうと思った。それは、駅のホームで通過する新幹線を眺めるときも同様。
 高速鉄道は見るに限る。
オレンジ色があざやかな700T系
改札の風景は日本と何ら変わらない